2007/12/20

くさい飯には見えません

刑務所の中」を見た。
いやいやもうとにかく笑っちゃった。コメディー映画ではないのだけど。
特典映像で、主演の山崎努がインタビューを受けていて「原作者の花輪さんにお会いしに行ったが、とてもチャーミングな方だった」と言っていた。
わたしは知らなかった。漫画家の花輪和一って。
そのチャーミングな花輪役を、山崎努が実にチャーミングに演じていた。刑務官に叱られて、猫が耳をピッと横にしてちぢこまるみたいに怯えたり、懲罰房の中で内服薬の袋をめちゃめちゃ一生懸命折って糊付けしたり(トイレも限界まで我慢)、だるだるになったくたびれパンツを「こんなすごい中古のパンツ、よそではぜったい穿けない」と言って誇らしげに仁王立ちしてみたり、ご飯に醤油をかけると美味しいことに気づいて悦に入ったり。あまりの可愛らしさに、わたしは涙が出ちまった。
そうそう。泉ピン子主演の女子刑務所のドラマなどでも見かけるが、刑務所の食事は不思議と美味しそうに見える。あれはきっと、自由を制限された塀の中だからこそ、だと思う。この映画の中は食事のシーンがとても多かった。家庭の食卓に並んだら、質素でわびしくなるメニューだろうけど、それをがつがつとむさぼる感じがなんか良いのだ。
シャバと隔てられた世界というと、陰鬱で窮屈で囚人同士の諍いが絶えないというイメージだったが、毎日3食与えられ、風呂にも入れて、眠る布団もあり、それを幸せと感じてゆるやかな受刑者生活を送る人もいるんだろうな、という新たな発見があった。
こんなに面白いなら原作の漫画も読みたいなーと思ってネットで花輪和一を調べてみたら、丸尾末広と似た雰囲気の漫画を描く人だったらしい。丸尾末広!持ってます「少女椿」。(読むたび厭世的になります)
興味深いと思ったのは、「ちびまる子ちゃん」のキャラクターの花輪君と丸尾君は、この二人の漫画家の名前からもじられたネーミングだったということ。「ちびまる子ちゃん」て、あんなにほのぼのとした漫画なのに!さくらももこの粋なセンスを感じた。